1 暗号資産(仮想通貨)取引量、保有量の増加
暗号資産(仮想通貨)の取引が一般化して久しいところですが、現在は、暗号資産を保有している方々も非常に増えているところでしょう。
一般に動産、債券、不動産などあらゆる財産は判決等による強制執行の対象となり、債務を履行しないなどの場合には、裁判所の関与する手続により強制的に権利者の権利の実現の対象となります。
それでは、近時あらたに発生した金銭的価値のある財産といえる暗号資産(仮想通貨)については、どうでしょうか?
2 暗号資産(仮想通貨)の保有形式により結論が分かれる
①暗号資産交換業者を通じた保有の場合
まず、「暗号資産交換業者」とは、金融庁・財務局の登録を受けた暗号資産(仮想通貨)の売買、保管、管理を行う事業者のことをいいます。
一般的には、仮想通貨取引所とも呼ばれ、国内でもCMで馴染みのある事業者も多くあるところです。
多くの方々は、暗号資産(仮想通貨)の取引をこれら暗号資産交換業者を通じて行い、自らウォレット(暗号資産取引のための「秘密鍵」を管理するツール)を管理しない形式での保有を行っていることがほとんどであるといえるでしょう。
そもそもこの「ウォレット」による管理ということ自体意識していない方が多数と思われます。
この形式での暗号資産保有の場合には、たとえば銀行預金に対する強制執行などと同様、保有者の暗号資産交換業者に対して有する債権的請求権を対象とした強制執行として、強制執行が可能と考えられます。
②債務者が独自に管理する「ウォレット」で保有する場合
暗号資産の根幹的技術であるブロックチェーンにおいて暗号資産取引を行うための公開鍵暗号方式の「秘密鍵」(非常に長いランダムな文字数字の羅列です)を管理するためのツールのことを言います。
ウォレットには、WEBウォレット、PCのウォレットアプリ、モバイル機器のウォレットアプリ、USBのような形状のハードウェアウォレット、或いはペーパーウォレットなど様々な形式のウォレットが存在します。
手続上、暗号資産(仮想通貨)を民事執行法上の「その他財産権」として民事執行法第167条以下の規定を適用して強制執行手続を行う等が検討されていますが、結局のところ、差押えの「秘密鍵」を知ることができなければ実効性はないとされています。
また、「間接強制」(民事執行法第172条)といって、債務者に対して秘密鍵の開示を請求し、開示されない場合は1日あたり〇万円を支払えとする方法も検討されます。ただ、既に強制執行手続まで進んだ債務者が容易に情報を開示するとは考えられず、これによっても実効性の確保は難しいであろう、と一般には論じられているところです。
以上のように現状の検討としては、債務者が独自に管理する「ウォレット」で暗号資産を保有している場合、それに対する強制執行には事実上大きな困難性を伴うということといえます。
ところで、上記のような議論において、各検討は、「秘密鍵」の開示云々としてあたかも直接にこれを開示するイメージを想起せる形で議論がされていますが(無論、議論のために抽象化している部分もあるのでしょうが)、実際にはそのような桁数の極めて大きいランダムな数字の羅列を直接記憶している保有者はまずおらず、上記「ウォレット」のパスワード(或いはウォレット復元のためのリカバリーフレーズでしょうか)が実際の開示の対象となるところかと思われます。技術的(デジタルフォレンジックなど)にはそれらパスワードを特定の電子機器から事実上取り出すことは可能なような気がしますが、手続としては整備されていないというところでしょうか。
いずれにせよ、現状多くは暗号資産交換業者を通じた保有であり、独自ウォレットにより管理された暗号資産への強制執行が困難との実害が多くないことから問題が顕在化されていないのかもしれませんが、かなり大きな財産的価値のある暗号資産について強制執行が困難であるという実情が望ましいとはいえないと考えられます。
端的には現行法が立法時想定していなかった新しい形で発生した財産について、立法的手当を行う必要があるでしょう。
デジタルフォレンジック等については以下の記事もご参照。





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