ブロガー、動画クリエイターは注意が必要!!【著作物の写り込み】と著作権の法律問題

目次

1 写真や動画に写り込んだ著作物の法律問題

 ブログや動画製作において写真や動画を撮影した際、背景に意図せず或いはどうしても排除することができずに、キャラクター等が描かれているポスター、洋服などが写り込んでしまうことがあります。
 ブロガー、動画クリエイターの方々においても、何となく「大丈夫なのかなあ?」などと気になっていることも多いと思います。また、事実上何も請求されていないからいいやと検討をやめてしまっている事例もあるのではないでしょうか?
 今回はその気になる著作権の問題について解説します。

 著作物を写真や動画に収録することは複製権の対象となる行為となり、また、それらを無断でブログ、SNS、動画投稿サイトに投稿して配信すれば、公衆送信権等の侵害として著作権侵害となってしまいそうです。

 しかしながら、単なる写り込み等について通常は当該著作権者の利益を不当に害するとまでは言えない場合もあると考えられ、そのような趣旨のもと、著作権法は、写真の撮影、録画等やこれらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(「複製伝達行為」)の対象となる事物又は音に付随して対象となる事物又は音に係る著作物(簡単に言えば写り込んだ著作物。当該写真等著作物における軽微な構成部分となるものに限るとされます。「付随対象著作物」)については、一定の要件のもと、方法を問わず利用することができるとしています(著作権法30条の2第1項)。

著作権法30条の2第1項
写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為(以下この項において「複製伝達行為」という。)を行うに当たつて、その対象とする事物又は音(以下この項において「複製伝達対象事物等」という。)に付随して対象となる事物又は音(複製伝達対象事物等の一部を構成するものとして対象となる事物又は音を含む。以下この項において「付随対象事物等」という。)に係る著作物(当該複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの(以下この条において「作成伝達物」という。)のうち当該著作物の占める割合、当該作成伝達物における当該著作物の再製の精度その他の要素に照らし当該作成伝達物において当該著作物が軽微な構成部分となる場合における当該著作物に限る。以下この条において「付随対象著作物」という。)は、当該付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、当該付随対象事物等の当該複製伝達対象事物等からの分離の困難性の程度、当該作成伝達物において当該付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らし正当な範囲内において、当該複製伝達行為に伴つて、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該付随対象著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
(太字加工は筆者による)

 なお、令和2年の法改正で、近時のデジタル化の進展に応じた新たな方式の発生等に対応するため、インターネットのライブ配信、CG化、スクリーンショット等の際の写り込みについても、一定の要件のもと許諾のない著作物の利用を認め対象範囲の拡大がなされました(「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」、令和2年6月5日成立。)。

 令和2年の著作権法における改正点のポイント
①「写真の撮影」・「録音」・「録画」に限定されていた対象行為を複製や伝達行為全般に拡大したこと
②著作物を創作する場面に限らず、創作性が認められない行為を行う場面も対象に含めたこと
③メインの被写体から分離が困難なものに限定しないこととしたこと
④「正当な範囲内」という要件を新設したことと

 改正法に関する文化庁のQ&Aにおいては、本件改正について、日常生活等において一般的に行われる行為に伴う写り込みが幅広く許容されることとなるとし、適用範囲の拡大の例示として、①スクリーンショットやインターネット上での生配信、模写、街の風景のCG化など多様な行為に伴う写り込み、②固定カメラでの撮影など,創作性が認められない行為を行う場面における写り込み、③子供にぬいぐるみを抱かせて撮影する場合など、メインの被写体から分離が可能な場面における写り込みを挙げています(注1)。

(※注1)文化庁ウェブサイト
「ホーム > 政策について > 著作権 > 最近の法改正等について > 令和2年通常国会 著作権法改正について > 5.改正法Q&A 問6」

2 『付随対象著作物』の複製、翻案等その利用の要件

『付随対象著作物』として利用できるかについては以下の各要件を検討する必要があります。

①軽微な構成部分

 まず、著作権法30条の2第1項では、付随対象著作物の要件として、作成伝達物(複製伝達行為により作成され、又は伝達されるもの。簡単にいえばブログ用に撮影した写真や、動画投稿用に録画した動画など。)において写り込んだ著作物が軽微な構成部分となる場合であることが必要となります。
 
 該当性の具体的な判断は、当該著作物の占める割合、当該著作物の再製の精度その他の要素に照らして判断されます。例えば、写り込みの全体に占める物理的な割合は考慮要素となりますが、その写り込んだ部分がぼやけている場合には割合がかなり大きくても同条項の適用があり得ると考えられます。

②正当な範囲内

 令和2年改正前の著作権法においては、「分離することが困難であるため」として不随対象著作物としての利用の適用範囲を中心となる被写体から分離困難な著作物の写り込みだけに限定していましたが、現在の著作権法においては当該要件はなくなり、メインの被写体に付随する著作物であれば、分離困難性にかかわらず適用対象に含まれることとなります。
 
 ただし、分離困難性の点は、正当な範囲内での利用の要件を判断する1つの要素に取り込まれています。
 判断としては付随対象著作物の利用により利益を得る目的の有無、分離の困難性の程度、作成伝達物において付随対象著作物が果たす役割その他の要素を検討し、正当な範囲内での利用が許されることとなります。

③著作権者の利益の不当な侵害にならないこと

 上の①及び②の要件を満たしたとしても、同条項但書により付随対象著作物の種類及び用途並びに当該複製又は翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合はこの限りでないとされますので、そのような場合には無断での利用はできないこととなります。

 この点については、「著作権者の著作物の利用市場と衝突するか,あるいは将来における著作物の潜在的販路を阻害するかという観点等から」(注2)判断されるとされます。

(※注2)前掲文化庁:ホーム > 政策について > 著作権 > 最近の法改正等について > いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備についてhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html

3 実際の対応はどうする?

 写り込んだ著作物が撮影した写真・動画の軽微な構成部分であることを前提に、○写り込んだ当該著作物の利用により利益を得る目的か否か、○分離の困難性の程度、○写り込んだ著作物が果たす役割等から判断して正当な範囲内での利用であり、かつ、著作権者の利益を不当に害することとならないと判断される場合には、許諾を得ない利用が可能となりますが、ただ、この判断が難しいことも十分想定されます(究極的には裁判所における司法判断とならざるを得ない)。

 ブロガー、動画クリエイター等の方々においては、事実上の紛争の回避等のため、可能な限りキャラクター等の第三者の著作物が写り込まない写真・動画の作成や削除処理など適切な処理をしてからの利用が望ましいといえます。

4 『付随対象著作物』に該当し得る場合ってどんなものが想定される?

文化庁は以下のような事例を挙げています(注3)

○写真を撮影したところ,本来意図した撮影対象だけでなく,背景に小さくポスターや絵画が写り込む場合
○街角の風景をビデオ収録したところ,本来意図した収録対象だけでなく,ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合
○絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載する場合
○ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像を,放送やインターネット送信する場合

【前掲文化庁:ホーム > 政策について > 著作権 > 最近の法改正等について > いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備についてhttps://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/utsurikomi.html より】

※注3 なお、当該例示は旧著作権法下における事例例示であり、また、文化庁は、「ただし,本条の対象となるかどうかについては,最終的には,個別具体の事例に応じ,司法の場で判断されることになります。」との留保をつけているため、その範囲での参考情報となります。

関連書籍:『Q&Aデジタルマーケティングの法律実務~押さえておくべき先端分野の留意点とリスク対策~』(拙著、2021年刊、日本加除出版)

※本稿は、私見が含まれ、また、実際の取引・具体的案件などに対する助言を目的とするものではありません。実際の取引・具体的案件の実行などに際しては、必ず個別具体的事情を基に専門家への相談などを行う必要がある点にはご注意ください。


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